よもふけた夜中に帰ってきたあなたはお帰りなさいと駆け寄る私にキスをくれてすぐにシャワーに向かう。私はそのときに香ったほかの女の香をかいで気付かれないようにため息をついた。それはほぼ毎日の繰り返しであり日常で、私は毎回違う女の香にむせ返るほどの吐き気を覚えるのだ。あなたは今夜も他の女をその胸に抱いて愛をささやき情熱的なキスをしたのだろうか。かあっと嫉妬で熱くなり、さあっと絶望でさめていく。扉の閉まる音と水音はあなたが私に気を使って女の香をおとしているのだと知っている。あなたはとても聡いから私があなたのことを愛していることを知っているし(知っているうえで思わせぶりな態度をし他の女の香をつけて帰ってくるのだ)むせ返るような嫉妬で気がどうにかなりそうになることも知っている。なんて酷い人! そう思案する間にも私はあなたの下着とパジャマを用意して脱水所におき、扉の開く音がしたら風呂上りにいつも飲む良く冷えた檸檬入り飲料水を良く冷やしたガラスに注いでテーブルの上におく。髪から滴る水もそのままに現れたあなたに私は「風邪ひくよ」と注意してソファに座ったあなたの髪を丁寧に拭き、その間に檸檬水があなたの喉を潤すと、あなたは私に問うてきた。 「ねぇ、」 「なに、ウラ」 「今日も僕を好きでいてくれた?」 「もちろん」 「今日も僕を愛してくれていた?」 「もちろん」 「じゃあ、ご褒美あげないとね」 毎度毎度のことながらこのときのあなたの表情に声にどきりとさせられる。すうと近づいてきたあなたに私は目を閉じることなく褒美を受け取った。 私はあなたの狗になりたい。永遠の忠誠を誓う犬になりたい。あなたの敵には牙をむき、あなたの想いに応えることだけを生きがいにいきたい。あなたに愛されるよりもずっとあなたを愛し、あなたの帰りを待つことだけを生きがいにいきたい。私の最大の喜びであり癒しはあなたであり、私を最もたやすく傷つけるのもあなた。この矛盾に気付かれないようにため息をつきながら今日も私はあなたのいなくなったベッドで目を覚ますの。 いい子にするからご褒美ちょうだい? |