会うたびに私の腕(細かく言えばそこにある傷の変化)を確認してくるのが煩わしくもあり、人間扱いされている気がしてひどく居心地がよかった。怒っているんだよとしめすように心配しているんだと暗にいうように、眉間に寄せられる皺がまとう雰囲気の変化が幼い子供であった私の心にひどく安堵を与えてくれた。 「ウラ」 鳴き声や涙声の悪態が聞こえる車内で私はポツリとその名を呼んだ。 私は、君がいて、確認してくれるから、死にたいっていわないって誓ったのに。死にたくないって思ったのに。 どうしてくれる愛しい人。君が消えたんじゃ、あの誓いも思いも無効なのに。一分間に一回はでてきてた言葉がでてこないよ。 「し」 までしか出てこない。喉のすぐそこまで出てきてるのに、いえない。どうしてなんで。こんなにももやもやする。言ってしまえばいい。そうしたら前に戻れる。君がいなくても平気になる。いってしまえ。私はし 君が残していってくれたのはけして柔らかくない唇の感触と晴れることのないこの胸の蟠り (群青三メートル手前) |