オレンジに染まった川が穏やかで不意に寂しさがこみ上げてくる。そんな夕方。私は悲しいことがあったわけじゃないのに、なんでか涙が止まらなくてそのまま歩くわけにも行かず、川原に座り込んでた。きらきら。反射する光がまぶしくて目をつぶり、また目を開けたとき、目の前に長い茶色い髪と緑のメッシュが特徴的な男の人が心配そうにのぞきこんでいた。誰を?私を?ずざっと後ろに引いた私は悪くないと思う。 「っ、な、だ、だれ」 「ああ!怖がらせたかったわけじゃないんだ!ごめん!」 私と同じぐらいの年頃だとおもうその人は私が怖がってると思ったのか(驚きはしたけど怖がってはない)あわてた様子でその場に正座して頭を下げてきた。吃驚して反応できずにいたら、私の様子を伺うように恐る恐ると顔を上げてきて、それが可愛くって思わず噴出すと、きょとんとしてからその人もほっとしたように顔をほころばせて、やっと笑ったな、そんなことを言って。はい、キャンディーどうぞ!私の手に数個の包みを握らせて。じゃあ!と去っていこうとした。 「え、あ、ちょ、ちょっとまってください!」 「ん?飴もっとほしいの?」 「いや、そういう訳じゃなくって」 「???」 心のそこから不思議そうな顔でこっちを見てくるその人に自分が無意識に呼び止めていたことに気が付いた。今の呟きはどういうことですか!とか、どっからみてたんですか!とかいろいろ聞きたいことはあったのに全部どっかに吹き飛んでいた。気のきいた言葉一つ出てこないなんて!混乱した頭で考えて何とか出てきたのは 「あの、お名前は!」 最悪だ。去っていこうとする人に名前を聞くって、いったいどこの時代劇よ!あれでも間違ってはないんじゃない!?内心恥ずかしいやらなんやらでごろごろなってる私をよそに、彼はまたきょとんとした顔をして、でもすぐに笑顔になって 「侑斗、桜井侑斗だ!」 そういい残して今度こそ去っていった。残された私は今聞いた言葉を何度も、覚えるように確認するように口にする。さっきまで泣いてたのがウソみたいに、なんだかバカみたいに幸せな気持ちになってる自分に気が付いて、?を浮かべた。オレンジの光はさっきよりひどく輝いて |