お母さんにいわれてしぶしぶやってきた近所のスーパー。持たされた買い物リスト(このリストだと今日か明日はカレーだ)とにらめっこして野菜を手にとって見比べる。いいのを選んできなさいよ!とか言われても私は農家じゃないし主婦でもないからスーパーで売ってる野菜の優劣の付けかたなんてわからない。どれも同じような色だし大きさだし形だってにたりよったり。現在はにんじんを選別中。安売りらしく山になってるにんじんを選ぶのにはかれこれ5分はかかってる。周りの主婦だと思われる人たちがどんなのを手にとって行くのかを見てるけどやっぱりどれも同じように見えてわからない。まぁ、たぶん煮ちゃうしわかんないよね。いいか適当で。にんじんの山が嫌になってきて適当に3本掴んで籠の中に放り込んだ。

「よし、次はーっと」
「これは駄目だ!!」
「へ?」

リストを見ようとして突然の声。吃驚してリストから顔を上げるとそこにいた人はさっと私の籠の中から適当に選んだにんじんを奪い取った。さっき籠に入れていたにんじんには葉が生えてたし、張りがなかった。古い証拠だ!だからこっちの張りがあるにんじんに変えたほうがいい!と熱弁して別のにんじんを3本籠に入れてくれた。(私にはいまいち違いがわからない)あっけに取られててされるがまま、あっというまの出来事。熱弁していた男の人は両手ににんじんを持って腕にさげた籠には大根、ねぎ、椎茸、お肉等がいかにも夕飯の買い物です。って感じで入ってる。でも私とそう変わらない年だと思われる男の人(しかもかっこいい)が主夫みたいに買い物をしていることにちょっとだけ違和感。でも妙に似合ってるあたりがなんかおかしい。

「もしかして、家の手伝いで買いにきたのか?」
「えっと、そう、ですけど。なんで?」
「実はちょっと前から見ていたんだ。選び方がなれてなかったから、そうかなぁって」
「!み、見られてたの気が付かなかった…」
「それだけ真剣に選んでたんだろ?いいことだ!よかったら他の野菜も選ぶポイント教えようか?」
「え、いいんですか?」
「もちろんだ!」
じゃぁ…ってことで、その後のたまねぎやらサツマイモやらじゃがいもやらの選び方も教えてもらった。今日一日でずいぶんと野菜の選び方に詳しくなった気がする。というか、どれも共通して言えるのは張りがあるかないかー。ってことらしい。男の人はわかりやすい野菜豆知識付きで丁寧に教えてくれて、突然なった携帯(相手は遅い私にお怒りなお母さんだった)に知らされて大分時がたっていたことに気が付いた。

「頼まれてたもの全部そろったので、もう行きますね。ありがとうございました」
「いや気にすることは無い。人助けをするのが趣味だからな!」
「素敵な趣味ですね、侑斗さん」
「!?」
「この間は、飴ありがとうございました。すっごく美味しかったです!」

にっこりと今まで一番綺麗な笑顔を浮かべたつもりで、私はレジへ向かった。脳裏には最後に見た驚いてる侑斗さんの顔がしっかり焼きついてる。気づいてないって思われてたのか、侑斗さんが気づいてなかったのかはわからないけど、多分アレは前者の顔だ。重くなったかごも全然苦にならない、待ち受けているであろうお母さんの小声だって全然平気。むしろお母さんには今日この日に買い物にいかせてくれて感謝だ。会えないだろうと思ってた侑斗さんに会えたんだから。きっと侑斗さんはこの辺に住んでいるに違いない。会える機会はまだまだあるってことだとおもう。きっと。ああ、どうしよう、幸せすぎてにやけが止まらない!







プラトニックラッキーガール



今の私はきっと世界一幸運!