負けた。最強のチームが、負けた。

思えば、その日はなぜだか胸騒ぎがして、首筋がちくちくして、とにかく嫌な予感と不安が体の中をぐるぐるとめぐっている感覚がしていた。でも、「大丈夫だ、。いつも通り俺たちが勝つから」あなたがいつもと変わらない笑顔で頭を撫でてくれるから、私は笑顔で送り出したんだ。
あの温かい大きな手、とりでを守る大きな手、破られるなんて誰も思わない。
どうして今日に限って委員の仕事なんてあったんだろう、どうせこんな日に図書館に来る物好きなんてほとんどいないのに!でも試合を見ていても私には止められないんだってわかっている。だからいてもいなくても結果は変わらないんだろう。それにそれも、もう意味の無い話。

誰かの、声が聞こえた。だぶん注意だから無視して走る。BPM200。私、インドアなのに。こんなに走れるなんて初めて知ったよ。視界は白く、独特のにおいがはなをつく。全部全部、不安にしかならない。ぐるぐるしてた不安は今心音と一緒にはねてる。どきどきして、今にも口から飛び出しそうだ。
見慣れたドレッド、間違えるはずのないマントにしがみつく。おちつけ、そう口が動いたけど心音で何も聞こえやしない。

「み、んな、皆は・・・?そ、れに、げ、源田、くん、は?」

ぜいぜい言いながらの声は聞き取りにくかっただろうに、言いたいことがわかったのか、鬼道くんはすっと一枚の扉を指差した。
赤く光る、文字。









僕をタイムマシーンに詰めて



あの人が目覚めるその時へ 私を連れて行って



(くべる)