「(ああ、また泣かせてしまった)」 薄暗い校舎裏。いわゆる告白スポットとして有名な場所で俺はぼんやり、駆け足で去っていく背中を見ていた。仕方のないこととはいえ、やはり女性の涙は見たくないもので、罪悪感がちくちくと胸を刺す。 なるべく優しい言葉で伝えたつもりなんだが・・・。 好意を向けられるのはありがたいはずなのに、正直呼び出されるたびに部活の時間が減るのが、ひいてはあいつに合う時間が削られるのが嫌でイライラしている自分がいた。なぜこうも俺がもてるのか、理解ができない。この容姿のせいなんだろうかそれとも別に何かがあるのか。考えても答えは出なくて、イライラする。 「またふったのか、源田」 「……のぞきは悪趣味だと何回も言っただろう」 がさり、葉がこすれる音がして、背後から姿を現した佐久間にため息をつく。この男と呼ぶには美しすぎる容姿をしてる佐久間は何時のころかは忘れたが俺が告白を受けるたびに近くに身を潜めてひっそりと聞くようになっていた。最初は邪魔をするためかと思ったのだが、本人曰く、 「源田をおとすのは一体どんな奴かと思ったんだ。今日もだめとか、お前どんだけ理想高いんだよ。なかなかの美人だったのに」 信じられない!そういわんばかりの表情で言ってのける佐久間に2度目のため息。そして近づいてきた佐久間の腕を取って引き寄せ、そのまますばやく唇を重ねた。突然の好意にも嫌なそぶりは一切見せず、おとなしく享受し、それどころかつかまれてないほうの腕は首に絡みつける。いつだって、佐久間はそうだ。まるで俺が浮気をすることを望むような言い方をする。こんなにもこの腕は俺を求めてるのに。 「佐久間、俺にはお前だけだと言ってるじゃないか」 「ははっ、わかってないな源田は」 ぬらりと光る唇は綺麗に弧を描きそれだけでぞくりとする。なにがわかってないとか瞬間的にどうでもよくなって、再び唇を重ねようとすると人差し指でとがめられた。我ながら不機嫌そうな顔をしたんだろう、こえー顔、そう呟かれて 賢いお前ならわかるだろ? (ノアロー) |