不毛な恋をしているっていうことは、誰よりも俺自身がわかっていた。ひたすら、一方通行な想いを繰り返して、ささいな幸福を後生大事にしてみたって、なぁんにもかわらない。かえられない。たとえるならそう、コップぎりぎり、表面張力でやっと中身がこぼれずにいるような、そんな状況。
それが苦でないはずがなくて、このコップをひっくり返したいと思いながらもバランスが表面上の均等が壊れるのが怖くて俺は何もできずにいた。 ずっと見ていた俺が別のコップががたんと倒れたことに気付かないわけもなくて、チャンスだと胸が震えた。けれど、震えてるくせに、目を赤くはらしてるくせに、気情に笑ってみせるあいつが痛いくらいに眩しくて、醜く浅ましい俺自身の首を絞めたくなった。


「お前、恋だの愛だのってのは醜いもんなんだよ。手にいれればこっちのもんだろうが。せっかく俺がチャンスをくれてやったのに」


殴ってやろうかと思ったがそいつの目も赤くなっててあいつにやったように軽く頭を叩くだけにとどまってやった。もちろん


「余計なおせっかいどーも」


嫌味を言うのも忘れない。








臆病ワルツ

俺たち皆不毛な恋の犠牲者ってことだ




(くべる)