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想像妊娠ネタ注意(not女体化)








あ、ヤバイ。と思ったときには目の前にボールがあって遅かった。
襲う衝撃、痛みと吐き気。どうやったらこんなに痛くなるんだと思うぐらい腹が、下腹部が、まるでナイフで切り裂かれるような激痛を発して収まらなくて、情けないことに俺は青々としたフィールドに倒れるしかなかった。周りのざわめきが遠くなる。


「佐久間っ!」


白を通り越して真っ青になった源田がこちらに駆け寄ってくるのを見て意識はフェードアウト。
源田、ずっと、お前に言わなくちゃいけないことがあったんだ。今日、言おうと思ってたんだ。驚くと思う。不気味に思うかもしれない。それでも、俺とお前の大事な話だから、聞いて欲しかったんだ。

もう、無意味になってしまったけど。

充満してる消毒液のにおい。目に痛い白。そして響く嗚咽。運動をしている身としては薄い肩をおおきく震わせて佐久間は泣いてた。泣き叫んでいた。 練習中に辺見のジャッジスルーで倒れたと思ったら、そのままうずくまって意識をうしなって、あわてて運んだ病院では目を覚ましたとたん泣き出して、源田には佐久間の身になにが起こっているのかまったくわからなかった。 ここ数日、調子が悪そうなのは知っていた。伊達に佐久間を見続けてはいない。そして調子が悪いのを隠そうとしているのも知っていた。今日も練習が終ったら問いただそうとしていたのだ。それが、もう少し早かったらこんなことにはならなかったのだろうか。
源田はすっかり途方に暮れていた。自問自答がぐるぐると駆け巡る。すると、いつのまに嗚咽はやんだのか、か細いけれどしっかりと呼ぶ声がしてはっと源田は腕の中の佐久間を見た。


「げ、んだ」
「佐久間?」
「いないんだ」
「・・・・・・え?」
「どこにもいない、さっきまでここにいたのに!」


ここ、そう言って佐久間は自分の下腹部を押さえた。


「いない、いない、どこにもっ!さっきまで確かに」
「佐久間、一体何が」


問いかけようとした口は此方にむけられた視線に閉じるしかなかった。喪失の絶望と理不尽さへの激しい怒り。感情の臨界点を越えたのかまた声をふるわせ涙をながしながら、まっすぐに鮮やかなオレンジは源田を射抜いた。


「いないんだ!俺とお前の―――――!!」







いないこはらんだ

かえして!




(くべる)